鮭のおにぎり100

“鮭おにぎり” no.31〜40までの10レシピをまとめました。

今回は盛夏編。近年、東京の夏は気温も湿気も高く、おにぎりを作る折にも、まず第一に安心して持ち歩ける調理法を考えるようになりました。
鮭はご飯に炊き込まず、焼いて余分な水分を取り除き、ほぐして使います。合わせる材料も夏向けのセレクトで、1)サッパリとしている 2)比較的塩分が強い 3)酢を使う のいづれか。
結果、漬物と鮭の相性の良さを再認識するよい機会となりました。


2019年 盛夏10種

vol.31 チーズの味噌漬けと紅鮭のおにぎり


真夏が近づき高温多湿のこの頃、味の強いものが食べたくて、チーズを赤味噌に漬けました。2〜3日後、味噌の風味をチーズがじっくり吸収した頃を見計らって、味噌をペティナイフで拭い、チーズをさいの目に刻みます。


チーズは、鮭と極めて相性がよく、鮭のチーズソースパスタは、我が家の定番です。リゾットなどでも、鮭を小さくほぐして、仕上げにチーズをおろしてかけて、とろけた熱々を食べます。

今回は、チーズを味噌に漬けたことで和テイストになり、ご飯との親和性を高めてくれるように思います。

鮭は、白系のご飯・チーズとのコントラストをつけるために、紅鮭で。味噌の塩味を生かすために、あまり辛くない鮭を選んでいます。



vol.32 新時鮭と十穀のおにぎり
 
新時鮭は、あじさいの開花とともに入荷します。
若い鮭ならではの品の良い脂ののりが秀逸で、
獲れたてに、産地でサッと塩をした状態で送られてくるので、甘塩です。
この繊細な味わいの鮭なら、細かな粒子の十穀と相性が良いなと思いました。
 
築地の豆屋さん、三栄さんで岩手花巻の雑穀を十種混合したものを売っています。
もちあわ・いなきび・うるちひえ・挽割りはとむぎ・黒米・赤米・アマランサス・大麦・黒千石大豆・半もちひえ。
米一合あたり大さじ一杯の十穀を合わせて炊き、さっくり手早く混ぜ、新時も加えて握ります。
「あ、この白い小さな粒は、あわね」「黄色いつぶつぶが、きびでしょ」と、
十の食感と味を楽しみながらの、仕事合間の昼飯。
築地の路地にそぼふる雨が、あじさいの花を長持ちさせてくれます。



 
vol.33 古漬胡瓜と新時鮭の炒飯おにぎり

築地の漬物店で購入した胡瓜の古漬を食べた時、懐かしい記憶が蘇りました。
それは、岩手の亡き義母が漬けていた胡瓜。パリッとした歯ごたえがあり、北国の農家の食卓にあって当たり前の一品でした。
「暑くて風通しの悪い東京では、漬け込みはまず無理」と言われて断念した古漬作りですが、築地で再会することができました。
東京が江戸と呼ばれた頃から、この都には、上京する人の数だけ、故郷の味が集まりました。築地では、そんな懐かしい味を、今も探し求めることができます。
今回は、この懐かしい古漬と時鮭のおにぎりです。最近、暑さのため食欲が落ち、少し余ったご飯に、優しい味の時鮭と、古漬を加えて炒飯に。少しさましておにぎりを作りました。
夫は、おにぎりを食べながら、故郷を思い出したかしら…?

 


vol.34 くらかけ豆と村上塩引きのおにぎり
 
「この豆、海苔の香りがするよ!」
市場の豆屋“三栄”さんが、焙煎してあるくらかけ豆を薦めるので、一粒食べてみると、煎り豆の香ばしさに加え、不思議なことに海苔の香りが、口いっぱいに広がります。
青大豆の一種で甘みが濃厚。その香りから「海苔豆」、またパンダのような模様から「パンダ豆」とも呼ばれているそうです。
 
「焙煎豆だから、そのままご飯に炊き込む事ができて、簡単!」
との一言で、購入決定!
煮炊きの時間をできるだけ短くしたい猛暑に、お誂え向きの一品です。
 
豆は山形産、となれば鮭はお隣の新潟産で、今回は、日本海ペアでおにぎりを作ります。村上塩引の濃密な味と、山形のくらかけ豆の甘みがマッチする一品です。




vol.35 奈良漬と奈良漬の粕で漬けた鮭のおにぎり
 
吉岡屋総本店さんは奈良漬で知られるお店で、当店とは背中合わせです。
独自の奈良漬は、酒粕を何回も漬けることで、深い飴色になるそうで、香りよく、盛夏のご飯のお供にぴったりです。
 
板前さんは、瓜の奈良漬を、よく研いだ包丁で、紙のように薄くそぎ切りにして供するそうで、私も今回は、その薄切りで鮭おにぎりを巻こうとしたのですが、上手に薄切りできませんでした。
いつか、チャレンジしてみようと思っています。
 
奈良漬というと、鰻重の箸休めというイメージが強いですが、鮭とも相性が良いです。
鮭を焼く前に、奈良漬のみじん切りを少量まぶしておき、1時間ほど置いてから焼きます。
もったいない!?

では、奈良漬のまわりについている味噌をこそげて、鮭になすりつけて一晩寝かせ、
翌朝、周囲の粕をぬぐって焼きます。
それだけで、濃厚な味の鮭の粕漬けに!
ぜひ、お試しください。
 



vol.36 ハチミツ酢漬けゴーヤと紅鮭のおにぎり
 
市場の八百屋さん藤本商店で、昼下がりに店先に1本ぽつん置かれたゴーヤを手に取りました。
以前は、空き地のフェンスで、隣近所の仲間がゴーヤを育てて収穫し、いっぱい穫れた年は、沖縄出身の人に教わり、ハチミツ酢漬けを作ったものです。
ここ数年、市場移転の雑事に、皆、すっかり慌ただしく、そんなささやかな楽しみも忘れていました。
 
久しぶりに藤本さんのゴーヤで作ってみます。
半分に割ってワタを取り除き、薄切りにし、塩を振ってなじませ、ザッと水をかけてキュッと絞ります。
これを、ハチミツを少量とかした酢に漬けて一晩。
翌朝刻んで、紅鮭のほぐしとともに、炊いたもち麦合わせご飯にさっくり混ぜ合わせ、おにぎりに。
 
真夏の暑い日のお弁当に、最高傑作ができました。
ゴーヤの苦味、鮭の塩味、ハチミツ酢の酸味の三位一体です。
ご飯はもち麦を混ぜたもので、もっちり弾力があり、強いゴーヤを跳ね返します。
作った4つのおにぎりを、たてつづけに全部、食べてしまうほどの美味さです。
 
食卓で供するなら、ゴーヤの量を増やして、ライスサラダにしても美味しいだろうと思います。
 



vol.37 ゴマ3種と超辛口紅鮭のおにぎり
 
市場で軒を連ねる向こう三軒両隣は、店番など代わりっこして互いをよく知るようになり、やがて生涯の付き合いとなります。
年を取ったなと、ふとした瞬間に相手を見て思うけれど、合せ鏡のようなもので、自分も同じように年を取っており、つくづく時は平等と実感します。
 
当店の真正面はヤマハチさんという加工屋さんのお店で、私が市場に働きに来た30年くらい前は、小売はせず業務用卸だけをしていました。だから、お店は夜更けに始まり、朝になると仕舞って帰る、素人目にはなんとも不思議な、市場ならではのスタイルでした。
 
今年はヤマハチさんのわさびゴマが、なかなか好評です。ゴマ一粒一粒にわさびがまぶしてあり、お茶漬けやお蕎麦に添えると、ピリッと辛くてクセになります。姉妹品にうめゴマがあり、スタンダードな煎りゴマと合わせて3色のおにぎりにしてみました。
 
鮭とゴマは、とても相性が良く、焼き鮭の香ばしさとゴマの香ばしさは喧嘩しません。プチッと弾けるゴマの感触がアクセントとなり、飽きない一品です。
 
そういえば、青森のはるえおばさんという方の店で、
鮭のおにぎりにゴマをまぶして、炭火で焼いていると聞きます。
炭火…!
一度、食べに行ってみたいと思っています。
 



vol.38 細切り昆布と醤油おこわむすび
 
以前、新潟・長岡出身の友だちに、故郷の“おこわ”である醤油飯をご馳走になった時、その美味さに感動し、いつか自分でも炊いてみたいと思っていました。
醤油飯は赤飯とは異なり、金時豆を使い、醤油味で、色も醤油色です。
 
お盆休みになり、もち米を取り出し、炊いてみることに。
盛夏には、もち米100%のおこわは少し重く思えて、米ともち米を半々にし、酒・醤油・みりん少々と切昆布も加え、米を炊くときよりは少し水量を減らして、間を置かずに、すぐに炊飯します。
 
豆は入れず、合わせる鮭は、あまりしょっぱくない紅鮭にして、炊きあがりに焼きほぐしを混ぜました。
 
長岡の醤油飯とは具が違いますが、「美味しいわ」と、件の友だちも褒めてくれたので、合格です。
夏の市場の昼飯は、ちょっとしょっぱめのご飯で、お茶をたっぷりいただきます。
十分水分をとらないと脱水症になり、夜、足がつってしまいますので。
 



 vol.39 冷やし鮭茶漬け焼きバラ海苔添え
 
台風一過、これから一週間、残暑が続きます。
この時期に、ズバリおすすめが、冷やし鮭茶漬。
「もー、なんにも食べたくない!」の大合唱に、困り果てた日は、これです。
 
濃いめの緑茶は、キンキンに冷やしておきます。
鮭は、超辛口紅鮭を、焼きほぐして冷やしておきます。
ご飯はおにぎりにして、ラップで巻いて冷やしておきます。
ついでに、ご飯茶碗も冷蔵庫で冷やしておきます。
 
さあ、食卓にみんなが集まりました。
「全部、冷蔵庫から出して!」
「器を並べて、おにぎりをポトン、鮭をパラパラ、お茶をザーっとかけて!」
「仕上げに、焼きバラ海苔を、サッとひと振り!」
 
食べてね。
御老体も「あ〜生き返る!」んだそうです。




vol.40 ぬか漬け大根と秋鮭のおにぎり
 
ぬか漬を手作りしている方、焼いた塩鮭の頭をぬか床に混ぜると、お漬物が格段に美味しくなるのを、ご存知でしょうか?
頭は、漬けてから数日で、かき回すほどにバラバラにほぐれます。
私も最初に試した時は、しまいに影も形もなくなり驚いたものですが、頭が分解されきった頃には、ぬか漬けした野菜の味に深みが出て、「あら、最近、糠漬が美味しくなったわね」と、家族も気付くほど。
 
ぬか床に含まれる乳酸菌や酵母に、鮭の頭のエキスが加われば、味に深みが出るのも当然。そのことをご存知の年配の主婦の方々が、数ヶ月に一回の割合で、鮭の頭を買いに来られます。
 
最近では、発酵食品への関心が高まるにつれ、野菜に限らず鶏肉やチーズなどをぬか漬けする方も多いようです。そこで、「そもそも鮭をぬか漬けしたら、旨味が増すのだろうか?」と考えました。
そこで、久々のチャレンジおにぎり!
 
秋鮭の切り身を糠に漬けて1日、取り出して焼いてみました。
正直なところ、味の変化は見られません。
続けて2日漬けます。
期待して取り出したのですが…なんだか水分が抜けただけで、旨味が増したとは言えません。
これ以上漬けても美味しくなりそうになく、チャレンジは失敗です。
どうやら、鮭の旨味は糠に吸い取られてしまったようです。
 
結果、鮭はぬか漬けせず、ぬか漬けの大根のさいの目切りとともに、おにぎりにしました。
こちらが美味しい事は、言うまでもありません。