「鮭弁」と聞いて、皆さんはどのようなお弁当を思い浮かべるでしょうか。
街のお弁当屋さんでは350円前後、百貨店や高級食材店では2,000円前後の鮭弁も珍しくありません。
どちらが美味しいかは、食べる人の味覚や価値観によって異なります。ただし、多くの人が高級鮭弁を見たときに思うのは、
「なぜこの鮭弁は2,000円するのか?」
という疑問です。
この疑問にきちんと答えられることが、高級鮭弁におけるブランディングだと考えています。
高級鮭弁を成立させる要素
高級鮭弁には、理由があります。
- 鮭の種類と産地が明確であること
- 米の種類・産地・炊き方が説明できること
- 海苔の品質や産地、加工方法が伝えられること
- 副菜一つ一つに意味があること
- 調理方法が丁寧であること
- 見た目が美しく、包装にも配慮されていること
これらを一つずつ言葉で説明できることが重要です。
鮭へのこだわり
築地にも高級鮭弁を扱う専門店があります。ガラス張りの店内では、10人近い職人が忙しく立ち働き、丁寧に鮭弁を作っています。
使用されているのは、例えば北海道産の選別された上質な時鮭を、塩のみで仕上げた塩鮭です。このような一本丸ごとの塩鮭は、塩分が時間とともに浸透し、脂の強さによっては焼けやすくもなります。
その品質を一年を通して管理し、安定して提供すること自体が、高級鮭弁の価値であり、作り手の努力と言えるでしょう。
鮭は一本を頭とヒレを落とし、二枚おろしにして切り身にし、丁寧に焼き上げます。炭火で焼く飲食店もあります。
こうした工程をきちんと説明できることが、高級鮭弁の第一条件です。
米・海苔への考え方
米は、国産であることを明記し、可能であれば産地まで伝えましょう。近年は米価も上昇しており、説明の重要性はさらに増しています。
羽釜炊きなど特別な炊飯方法を採用している場合は、それ自体が高い付加価値になります。そこまででなくとも、「なぜこの米が鮭に合うのか」を説明することが大切です。
海苔も同様です。国産であること、手焼きなど一手間かけている場合は、必ず言葉で伝えましょう。
人は味覚だけでなく、視覚や情報によって「美味しさ」を感じます。美味しい理由を伝えることは、実際に美味しく感じてもらうための重要な要素です。
ストーリーの力
人は、美味しいものの背景にも興味を持ちます。
私が鮭おにぎりを店で出し始めたきっかけは、相棒が新潟出身で、美味しい米の産地に詳しかったことでした。鮭専門店として、自信を持って勧められる鮭があり、そこに胸を張って勧められる米が合わされば、間違いなく美味しいものになる。
長年まかないで食べてきたその組み合わせを、「人にも食べてもらいたい」と思ったことが始まりです。
お店を始めた理由、続けてきた理由は、人それぞれ違います。その物語を添えることで、世の中に一つしかない鮭弁が生まれます。
