年末の押し迫ったころ、そろそろ閉店かなという時間に、年配の女性が来店され、
「『一のヒゲ』ありますか?」と聞いてきた。
「ん?『一のヒゲ?』」
聞いたことがない、何のことを言っているのだろう?
話を伺ってみるとどうも『鮭の胸ビレ』のことらしく、胸ビレ付きのカマの部分の「切り身」が欲しいのだという。
どうするのか聞いてみたら、お正月に神棚に供えるという。
「ごめんなさい、ヒレは落としちゃってるんですよね」と伝えると、
「どこか売っているところはないかしら?」という。
ここ築地でも鮭を扱っている店は少なくなってしまっているのと、この時間だともうだいたい閉まっているから他店で探すのは難しいだろう。
そこで、「一尾か半身をお買い上げいただければ、ヒレ付きに出来ますよ」
と伝えると、ちょっと迷った様子を見せたものの半身でお買いいただくことになった。
お待ちいただいている間に話を伺うと、その女性は新潟県の出身らしく、親が毎年『一のヒゲ』を神棚にお供えしていたとのことで、その慣習を受け継いでいるという。
ご要望通りの胸ビレ付きの半身分の鮭の切り身をご購入いただき、喜んでお帰りいただいた。

さて『一のヒゲ』が気になったので、お客さまが帰られたあとに調べてみる。
『一のヒゲ』では見つからなかったが、代わりに『一の鰭(ヒレ)』(もしくは『一鰭(いちびれ)』)というのが見つかった。
『ヒゲ』と『ヒレ』の違いは地域による呼び方の違いか、もしくはこちらの聞き間違いでしょう。
この『一の鰭』をお供えする風習があるのは、「塩引き鮭」で有名な新潟県村上市周辺のようです。
村上の塩引き鮭は当店でも取り扱いをしていて、その村上市周辺はおそらく日本で一番鮭の食文化が発達している街です。
その村上市周辺で昔から「年取り魚」として 食べられてきたのが「塩引き鮭」。
「年取り魚」というのは大晦日の夜、新年を迎える「年取り膳」に供される魚のことで、歳神様をお迎えするためのごちそうです。
中でも神様へのお供えものとして神棚に供されるのが『一の鰭』とのこと。
この『一の鰭』とは、鮭の胸びれがついている「カマ」の部分のことで、一尾から二つしかとれない貴重なもの。
神様にお供えした後の『一の鰭』は、一家の大黒柱が食べるものだったそうです。
なるほど、またお客さまにおしえていただき一つ勉強になりました!

こういった地域の風習は是非残していって欲しいものですね。
※当店では切身を販売する際には、鰭を切り落としています。
「鰭付き」を希望される場合には、一尾または半身で購入いただくか、切身の場合には前日までにご予約下さい。
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
築地 鮭の店 昭和食品
〒104-0045 東京都中央区築地4-13-14
TEL/FAX 03-3542-1416
通販サイト: https://tsukijisalmon.com/
YouTubeチャンネル:https://x.gd/2Xpy1
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
